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症例紹介『食道内異物・食道狭窄』

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食道内異物とは
食道内異物とは、食べ物やおもちゃ、骨、ガムなどが食道(口から胃へ食べ物を運ぶ管)に詰まってしまう状態です。ガム・牛皮・おもちゃ・ボール・焼き鳥の串・釣り針・骨などが原因になることが多く、特に慌てて飲み込む子で起こりやすい病気です。異物が食道に詰まると、食べ物や水が胃まで通れなくなるだけでなく、食道の粘膜が傷つき、時間が経つほど炎症や潰瘍を起こします。重症化すると食道に穴が開く(穿孔)こともあり、命に関わる場合があります。そのため、できるだけ早く治療することが重要です。
典型的な症状は以下の通りです。
・何度も吐こうとするが、ほとんど何も出ない
・食べ物や水を飲んでもすぐに吐き戻す(吐出
・何度も口をくちゃくちゃする、飲み込もうとする
・食欲がなくなる
・元気がなくなる
特に「吐き気ではなく、食べたものや水がそのまま出てくる(吐出)」ことは、食道内異物を疑う重要なサインです。
診断にはレントゲン検査や内視鏡検査を行い、異物が確認された場合は内視鏡で取り出す治療が第一選択となります。内視鏡で摘出できない場合や、食道に穴が開いている場合には手術が必要になることもあります。
異物が長時間詰まっているほど食道へのダメージが大きくなるため症状に気づいたらできるだけ早く動物病院を受診することが大切です。
 
食道狭窄とは
食道(口から胃へ食べ物を運ぶ管)の一部が細くなり、食べ物や水がスムーズに通れなくなってしまう病気です。
多くは、食道内異物が長時間詰まっていたことによる傷や炎症、胃酸の逆流、薬剤による食道炎、手術後の瘢痕(傷あと)などが原因で起こります。炎症が治る過程で傷が縮むと、食道の内側が狭くなってしまいます。
典型的な症状は以下の通りです。
・食べ物や水を飲んでもすぐに吐き戻す(吐出)
・固形物は吐き戻すが、水や柔らかい食事は比較的飲み込める
・食事の途中で何度も飲み込もうとする
・食事に時間がかかる
・食欲はあるのに体重が減る
・むせたり咳をしたりする(誤嚥性肺炎を起こしている場合)
特に、「食欲はあるのに食べるとすぐに吐き戻してしまう」「異物を取った後や食道炎の治療後から症状が続く」という場合には、食道狭窄が疑われます。
診断には、レントゲン検査や造影検査、内視鏡検査を行い、食道のどの部分がどの程度狭くなっているかを確認します。治療の中心は、内視鏡を使って狭くなった部分をバルーン(風船)で広げる「バルーン拡張術」です。1回で改善することもありますが、狭窄が強い場合は数回繰り返し治療が必要になることがあります。
また、食道の炎症を抑える薬や胃酸を抑える薬を併用し、治療中は流動食や柔らかい食事など、食道への負担が少ない食事管理を行います。
早期に治療を開始すれば、多くの症例で食事ができるようになります。しかし、狭窄が重度の場合や再発を繰り返す場合は、複数回の治療や長期的な管理が必要になることがあります。
 
<症例プロフィール>
マンチカン、去勢オス
 
<主訴・問題点>
今日昼ごろから急に何度も吐く
 
<検査結果>
意識レベル 正常
身体検査 体重3.88kg 体温37.7℃ 心拍数200回/分 
血液検査 ALT軽度上昇(123 U/L)
          上記以外は大きな異常値はなかった
レントゲン 食道内不透過性亢進領域あり、心陰影の変位
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<診断>
食道内異物
 
<異物摘出術>
麻酔下での内視鏡を用いた異物摘出手術を提案し、同意が得られたため実施した。
 
内視鏡を食道内にすすめて観察すると緑色の毛糸の塊が食道内を閉塞させていることがわかりました。(写真①
異物鉗子を使って少しずつ異物を摘出しました。(写真②
摘出後、観察すると食道粘膜の一部で、出血やびらんといった損傷があることがわかりました。(写真③
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 <術後経過>
麻酔からの覚醒もスムーズで術後のレントゲンも問題なかった。
食道粘膜の損傷があったので、食道狭窄などの合併症に注意が必要であることをお伝えして、退院とした。
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<退院後の経過>
内視鏡処置後、約3週間たったころ来院。徐々に食事を吐き出すことが増加し、ちゅーるなどの流動食だと吐き出さないが、ドライフードを食べた時はほとんど吐き出してしまうという症状がある、とのこと。
各種検査を実施するも、特異所見はなく、下痢などもあったため急性胃腸炎の可能性を考慮し、対症療法を実施していたが、効果が乏しい状況が続いた。
 
<観察+バルーン拡張術>
相談の上、食道狭窄の可能性が非常に高いので、診断と治療を兼ねて再度麻酔下で内視鏡処置を実施した。
 
1回目処置
食道やや遠位(咽頭食道限から約12cm)に内径3-4mmの線維性狭窄があった。(写真④、⑤
6,7,8mm径のバルーンにて拡張を実施した。(写真⑥、⑦
最終的に11mmのバルーン拡張にて狭窄部の拡張を確認できた。写真⑧
最後に食道チューブを再狭窄防止目的のため、狭窄部を通過させるように設置して終了した。
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2回目処置

1回目処置より9日後、ドライフードを一度に多く食べると吐き出してしまうが数粒であれば食べられるようになった、との症状の改善が確認できた。
同様にバルーン拡張術を実施した。
 
前回拡張した狭窄部で、内径7-8mmに再狭窄を確認した。(真⑨
11,12,13mm径のバルーンにて狭窄部の良好な拡張を確認できた。(写真⑩
最後に食道チューブを再狭窄防止目的のため、狭窄部を通過させるように設置して終了した。
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<その後の経過>
2回目処置より8日後、ドライフードも問題なく食べられている様子が確認できたため、食道チューブを抜去し、一連の治療を終了した。
 
<まとめ>
今回の症例は、食道内異物から食道狭窄になってしまい、吐出の症状が出てしまった症例をご紹介しました。
嘔吐と吐出は一見見分けるのが難しいため、吐き出している一連の症状を動画撮影していただき、情報を共有することが診断に役立ちます。
当院では内視鏡処置に力を入れております。消化器症状でお困りの際は、当院にお気軽にご相談ください。
 
 
2026年06月22日 16:03
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